EinScan Trakが変える3D計測現場、ワイヤレス化とマーカーレス化の実務効果

EinScan Trakが変える3D計測現場、ワイヤレス化とマーカーレス化の実務効果

Xでシェア Facebookでシェア

ニュースの概要

SHINING 3Dの新製品「EinScan Trak」の取扱開始が発表されました。特徴は、計測対象を追跡する仕組みにおいて、ケーブルを減らしたワイヤレス運用、対象物への目印を貼らないマーカーレス運用、二つの計測方式を使い分けるデュアルフォームを掲げている点です。3D計測では、準備作業や視界の遮り、対象物の大きさによる手法の切り替えが現場の負担になりがちでした。本製品は、スキャンそのものの性能だけでなく、計測前後の段取りを見直す選択肢として位置付けられます。

引用元: 【SHINING 3D 新製品】業界初、ワイヤレス・マーカーレス・デュアルフォームの3Dトラッキングシステム「EinScan Trak」を取扱開始(PR TIMES)

分析・見解

マーカー貼付を減らすことが計測時間と品質を左右する

従来の3Dスキャンでは、追跡用のマーカーを部品や治具に貼り付ける作業が必要になる場面がありました。小さな部品なら負担は限定的ですが、自動車の外装、金型、設備架台のような大きな対象では、貼付、位置確認、撤去、糊残りの確認まで工程が増えます。対象物の塗装や表面処理に制約がある場合は、貼る場所を選ぶ判断も必要です。

マーカーレス化の価値は、単純な作業時間の短縮だけではありません。貼付位置のばらつきや、作業者による貼り忘れを減らせるため、同じ部品を繰り返し測る工程の再現性を高めやすくなります。検査担当者が「測る前の準備」ではなく、測定結果の確認に時間を使える点も大きいでしょう。

ワイヤレス化は作業範囲より現場の動き方を変える

計測機器のケーブルは、移動の自由を制限するだけでなく、部品や三脚に引っ掛かるリスクを生みます。製造ラインの近くや大型設備の周囲では、ケーブルを避けながらスキャナーを動かすことで、測定姿勢が不自然になりやすい問題もあります。ワイヤレス運用は、こうした小さな中断を減らし、対象物の周囲を歩きながら連続して測る使い方に向きます。

ただし、ワイヤレスだから自動的に生産性が上がるわけではありません。通信の安定性、電池の持続時間、データ転送の待ち時間、充電管理を確認する必要があります。現場で評価すべきなのは、カタログ上の最大性能ではなく、休憩や段取り替えを含めた一日の実測時間です。例えば一回の測定が数分速くても、再測定やデータ整理に時間がかかれば効果は薄れます。

デュアルフォームは部品単位と設備単位の使い分けを促す

デュアルフォームは、異なる大きさや形状の対象を一つの仕組みで扱いやすくする考え方です。細かな形状を持つ部品では、細部の再現を優先した計測が必要になります。一方、設備全体や大型の金型では、広い範囲を安定して追跡し、全体の位置関係を捉えることが重要です。二つの方式を使い分けられれば、対象物ごとに別の機器を準備する場面を減らせます。

ここで見落としやすいのは、機器の台数よりも作業者の判断負担です。方式が複数ある場合は、どの場面で切り替えるかを手順書に落とし込む必要があります。最初の導入では、エンジン部品、樹脂成形品、設備周辺など三種類程度の代表例を選び、精度、準備時間、再測定率を同じ条件で比べると、適性を判断しやすくなります。

3D計測は単体性能から工程全体の設計へ移る

3Dスキャナーの評価軸は、これまで解像度や測定精度に偏りがちでした。しかし現場で成果を出すには、取得したデータが設計変更、加工、検査、保全のどこへ流れるかが重要です。計測の準備に30分かかり、データの整理に半日かかるなら、機器の高性能だけでは業務改善になりません。

EinScan Trakのように、追跡方法と扱いやすさを前面に出す製品は、3Dデータを専門担当者だけのものにしない可能性があります。製造現場の担当者が自ら寸法差を確認し、設計部門へ共有する流れが整えば、試作から量産までの判断が早まります。今後は、スキャン精度の比較に加え、現場教育の時間、データ連携のしやすさ、保守対応を含めて評価することが普及の条件になります。

ビジネスへの影響

導入判断は機器価格ではなく年間の準備工数で比べる

導入を検討する企業は、本体価格だけでなく、マーカー、治具、専用スペース、教育、保守を含めた総費用で比較すべきです。特に、月に何度も大型部品を測る企業では、マーカー貼付と撤去にかかる人数、測定場所への搬送、ケーブル整理の時間を記録すると、ワイヤレス化の効果を金額に換算できます。

最初から全工程を置き換えるより、再測定が多い部品や、外部業者へ測定を依頼している案件から試す方法が現実的です。試験導入では、測定準備時間、作業者一人あたりの処理数、再測定率、検査結果の承認までの時間を指標にします。精度だけで判断せず、従来法との比較を同じ対象物で行うことが重要です。

品質検査と設計変更をつなぐ運用が投資効果を高める

3Dデータを検査報告書に貼り付けるだけでは、投資効果は限定されます。測定データを設計部門のCADデータや製造履歴と結び付ければ、寸法ずれの傾向、金型の摩耗、加工設備の調整時期を追いやすくなります。現場で取得した形状をリバースエンジニアリング(実物から設計情報を起こす作業)に使う場合も、誰が、いつ、どの条件で測ったかを記録する仕組みが欠かせません。

一方で、マーカーレスやワイヤレスという言葉だけで全対象に適用できると判断するのは危険です。光沢面、透明部品、振動する設備、狭い作業場所では、別の前処理や固定方法が必要になる可能性があります。決裁前に実部品での試験を行い、通信環境、電池交換、データ形式、既存ソフトとの連携まで確認してください。製品選定の成功条件は、測定器を買うことではなく、設計、製造、品質保証が同じデータを使える状態を作ることです。

関連記事

[PR]