ニュースの概要
3Dスキャナーメーカーの Shining 3D が、オンラインプラットフォーム「ShiningSpace」を公開した。ブラウザだけでスキャンデータを表示するビューアと、データを加工するエディタの両方を使える点が特徴だ。専用ソフトを各自のパソコンに入れなくても、URLを開けば三次元データを確認し、そのまま手直しできる。ドイツの3D専門メディア 3Druck.com が伝えた。これまでスキャナー各社は、機種ごとに重い専用ソフトを配ってきた。今回の発表は、その配り方そのものを見直す動きと受け取れる。本稿では、公開情報の範囲で、現場の仕事がどう変わり得るかを考える。
引用元: Shining 3Dが「ShiningSpace」をリリース:ブラウザ上でビューアとエディタを利用できる3Dスキャン用オンラインプラットフォーム(3Druck.com)
分析・見解
重いソフトを入れずにURLで開ける意味
3Dスキャンデータは大きい。数百万点の点群(=測定した点の集まり)や、それを面でつないだ形状データは、数百メガバイトから数ギガバイトになることも珍しくない。これまでは、受け取った側が同じメーカーの専用ソフトを入れ、性能の高いパソコンで開く必要があった。取引先に確認を頼むだけで、インストールと使い方の説明が発生する。
ブラウザで開ける仕組みなら、この壁が大きく下がる。営業担当や品質保証の担当者、さらには海外の協力工場も、URLを受け取るだけで同じ画面を見られる。データを添付メールで往復させる手間も減る。
スキャナー各社が囲い込む場所が変わりつつある
3Dスキャナー業界では、本体の精度や価格だけで差をつけるのが難しくなっている。中国勢の台頭で、手持ち式でも実用精度の機種が手頃になった。すると競争の中心は、撮ったあとのデータをどう扱うかに移る。
他分野に前例はある。設計の世界では、Onshape のようにブラウザだけで動く設計ソフトが現れ、共同作業の標準を変えた。写真の世界でも、編集と共有がクラウドに寄った。3Dスキャンも同じ道をたどるとみるのが自然だ。ShiningSpace は、スキャナーを売る会社が、データの置き場と編集の場まで握ろうとする動きの一例といえる。
ブラウザ編集の限界と、まだ見えない部分
一方で、期待しすぎは禁物だ。ブラウザは、パソコン本体の計算力を使い切りにくい。大規模な点群の位置合わせや、精密な誤差解析のような重い処理は、当面、専用ソフトのほうが速く確実だろう。実際には、軽い確認と簡単な修正をブラウザで行い、本格的な処理は従来のソフトで行う、という分担になる可能性が高い。
また、公開情報だけでは、データの保管場所、通信の暗号化、他社形式の読み込み対応といった要点が読み取れない。工場の図面や試作品の形状は、企業の機密そのものだ。この点が明確になるまで、導入の判断は慎重であるべきだ。
見落とされがちな視点は、データの寿命である
独自の見方を一つ挙げる。クラウド型の最大のリスクは、機能不足ではなく、データの寿命だ。サービスが終了したり、料金体系が変わったりしたとき、過去のスキャンデータを標準形式で取り出せるか。ここが、長く使う設備の記録として使えるかを左右する。
工場や設備のスキャンは、10年単位で参照される。便利さに目を奪われず、出口の設計を先に確かめる姿勢が要る。
ビジネスへの影響
取引先とのやり取りと社内確認が軽くなる
まず効果が出やすいのは、確認作業だ。試作品の寸法確認や、受け入れ検査の結果共有を、ブラウザで済ませられれば、ソフトの手配と説明の時間が減る。特に、取引先が多く、相手ごとに環境が違う中小の製造業では効果が大きい。
導入前に、次の三つを小さく試すとよい。実際に使うデータの大きさで表示が滑らかか。取引先の社内ネットワークから開けるか。編集内容が元データとどう区別されて残るか。
契約前に必ず確かめたい三つの条件
一つ目は、データの保管場所と、委託先から見える範囲だ。機密性の高い形状は、社外に置いてよいかを、先に社内ルールで決めておく。二つ目は、標準的な形式での書き出しだ。サービスをやめる日が来ても、データを持ち出せることを確認する。三つ目は、料金の仕組みだ。保存容量や利用人数で増えるのか、機器の購入に含まれるのかで、総費用が変わる。
結論として、いきなり全社展開せず、一つの案件で並行運用し、従来のソフトと結果を比べるのが現実的だ。成果が確認できた工程だけを、ブラウザ側へ移していけばよい。